職場にいたとある人の場合
彼は長期休暇の時には世界中を旅行していた
彼の定年ひと月前に2人で話をする機会があった
長い間、毎朝乗る電車に気になる女性がいたのだが
恐らく既婚者だろうと思っていたそうだ
しかし来年にせまる定年 退職すれば会うこともないだろうと思い
思い切って声をかけたところ 彼女も独身者であり
そこから毎朝通勤時に会えば会話をするようになり
結婚が決まったという 彼はこうも言っていた
僕の唇はもう灰色だ 恋愛は頬が薔薇色のうちにする方がいいと
そうは言いながら彼の瞳は澄んで輝いていた
友人にいたとある人の場合
彼は数年ごとに彼女になる
豊胸手術をして控えめな胸を持ち
数回女性とも結婚し子供が数人いる
彼が彼女になっている時は 流行りのスイーツを食べに行こうと誘われ
彼女が彼になっている時は 荒れ果てた自宅に掃除の手伝いに誘われた
お子さんたちがそれぞれの母親とそれぞれに暮らしているが
学校行事には父親として かかさず参加していた
この友人の本業は画家だった
彼の親友がAIDSで旅立ち その後連絡が途絶えた
灯台下暗し的な飲食店にいたとある人の場合
彼女は小柄で幼く見える流れ者だった
沢山の名義の通帳をお守りのように持ち歩き
振り込まれた年金を言葉巧みに貢がせる薬物中毒者だった
とある都市の警察署の交差点の対角線にある建物に
裕福な両親を持つ人物が飲食店を開業した
知人の付き合いで2度ほど行った
そこは1Fが和食店2Fが会員制だった
後日知った所によると その店は違法薬物の販売をしていた
ある日 生後間もない乳児を連れたゲイカップルに相談を受けた
流れ者の薬物中毒の女性が自宅出産しそのままどこかへ行ってしまった
赤ちゃんの世話の仕方を詳しく教えて欲しいとのことだった
私はそのカップルの一人の母親と相談し
時間を空けてしまう前に公的機関へ届け出ることと
この子もいずれは自分の人生を切り開き歩いて行くのだからと
私たちは長い時間を話し合いにあてた
私個人は何より 一刻も早く病院で健康なのか栄養状態は大丈夫なのか
この子供の為に精密検査を受けさせて欲しいと話した
彼らカップルは 意見が分かれ一人が去った
もう一人は見ている方が苦しくなるほど
一秒すら惜しむように乳児を慈しんでいた
その後 公的手順で離ればなれになった彼と乳児だった